相続放棄を考えているとき、遺品に触れてよいのか

相続との関係

※本記事はプロモーションを含みます。

遺品整理を始める前に、まず相続の立場を確認する

親を亡くされた遺族が相続書類に向き合う場面

親御さんを亡くされた直後は、さまざまな手続きと実務が同時に降りかかってきます。賃貸物件であれば大家さんから早期の明け渡しを求められることもありますし、故人の荷物があることで心理的な圧迫感を感じる方も少なくありません。こうしたプレッシャーの中で、遺品整理を急いでしまう気持ちは自然なものです。

しかし相続放棄を考えている場合、その判断がどうしても重要になります。なぜなら、遺品に対してどのような行動を取るかが、相続放棄の成立を左右する可能性があるからです。

遺品整理を進める前に、自分が本当に相続人なのか、あるいは相続放棄をするのかという基本的な立場を確認することが不可欠です。このステップを飛ばして作業を進めてしまうと、後々後悔することになりかねません。

遺品整理専門【ライフリセット】

相続放棄を考えているとき、遺品に触れてよいのか

相続放棄を考える人が銀行書類を慎重に扱っている様子

相続放棄を検討中の方が最も心配なのが、「遺品に手を付けると相続放棄ができなくなるのではないか」という不安です。この心配は実は根拠があります。

法律では、相続人が故人の財産を使用したり処分したりすると、相続を承認したものとみなされるという制度があります。これを「単純承認」といいます。一度単純承認されてしまうと、その後は相続放棄ができなくなってしまうのです。

では具体的には、どのような行為が単純承認にあたるのでしょうか。典型的な例としては、故人の現金や銀行預金を自分のために使ったり、家や土地を売却したり、貴金属や絵画などの動産をリサイクル業者に売却することが挙げられます。

一方で、すべての遺品への接触が相続放棄を妨げるわけではありません。形見として故人の写真を数枚持ち帰る、衣類を仕分けする、食べ物を処分するといった行為だけでは、直ちに相続の承認とはみなされません。

問題は、その行為が『財産の価値のある部分を処分したか』『自分の利益のために行動したか』という点にあります。しかし判断が難しいケースが多く、どこまでなら安全なのか一概には言えません。相続放棄を視野に入れているのであれば、遺品の売却や処分を伴う大きな判断をする前に、弁護士や司法書士に相談することをお勧めします。

相続放棄の期限と、時間的な余裕のなさ

3ヶ月の期限を確認するカレンダーと時計

相続放棄を検討する際に必ず頭に入れておくべき期限があります。相続放棄は、自分が相続人になったことを知ってから3ヶ月以内に家庭裁判所に申し立てる必要があります。(民法915条)この期間を「熟慮期間」と呼びます。

もしこの3ヶ月の間に判断がつかない場合は、家庭裁判所に申し立てることで期間を延長してもらうことが可能です。ですが申立てそのものに手間がかかりますし、延長を認めてもらえるとは限りません。

賃貸物件の場合、この事情がさらに複雑になります。大家さんから明け渡しを求められる期限と、相続放棄の熟慮期間とが重なることがあるからです。「大家さんの催促に応じて急いで遺品を処分してしまったら、後から相続放棄ができなくなってしまった」という事態は、十分あり得ます。

時間の制約がある中での判断こそ、専門家の力が最も必要な場面です。賃貸物件の場合は特に、弁護士や司法書士に状況を伝えて、スケジュール的に何をどの順序で進めるべきかについてアドバイスをもらうべきです。

「生活に必要な片付け」と「遺品の処分」は別物

故人の生活必需品と価値のある遺品を分別する作業

遺品整理と言うと「全部処分すること」と思われがちですが、相続放棄を検討中であれば、まずは「生活に必要な最小限の整備」と「財産的価値のある処分」を区別して考える必要があります。

例えば、夏場に故人の部屋に食品が放置されていれば、衛生上の理由で廃棄しなければいけません。また家の中に害虫が湧いていれば、その害虫駆除は生活維持のために必要な行為です。こうした最小限の対応までは、相続放棄の妨げにはならないと考えられます。

これに対して、故人の貴金属をリサイクルショップに売却する、骨とう品をネットオークションで販売する、高級時計を買取業者に売るといった行為は全く別です。これらは財産の処分そのものであり、相続を承認したとみなされるリスクが高いのです。

多くの方が誤解しているのが、「不用品だから売ってもいいだろう」という判断です。故人の視点では「不用品」であっても、その品物に経済的な価値があれば、それは相続財産の一部です。相続放棄の可能性が残っているのであれば、専門家の指示を待つまでは手を付けないことが最善です。

遺品整理業者に依頼する前に確認しておくべきこと

遺族が弁護士と相談する個室での相談風景

遺品整理業者に作業を依頼する場合、相続放棄が確定していない段階では慎重な判断が必要です。業者の多くは遺品の「処分」と「買取」を組み合わせて作業を進めるからです。処分の判断が後からひっくり返されると、業者も依頼者も困ることになります。

遺品は家庭から出る不用品であり、法律上は一般廃棄物に分類されます。これを適切に収集・運搬するためには、市区町村が発行する「一般廃棄物収集運搬業許可」が必要です。都道府県から発行される「産業廃棄物収集運搬業許可」では代替することができません。信頼できる業者かどうかを判断する際の1つの基準として、この許可を保有しているかを確認しましょう。

また業者の中に「遺品整理士」という資格を持つ人がいることがあります。ただし、遺品整理士は民間資格であり、国家資格でも営業許可でもありません。無資格で遺品整理業を営むことそのものは違法ではないため、この資格だけで業者の信頼性を判断することはできません。

遺品の買取を伴う場合は、その業者が古物商許可を持っているかどうかも確認しましょう。古物を買い取るためには管轄の警察署への申請が必須です。許可なく買取を行うことは違法です。相続放棄が視野にある段階では、まずは相続の結論を待ってから本格的な整理を依頼することをお勧めします。

相続放棄後に遺品はどうなるのか

地元の家庭裁判所の入り口

相続放棄が成立すると、法律上はその人は初めから相続人ではなかったことになります。しかし遺品や故人の家の管理責任が完全になくなるわけではありません。

相続放棄後も、他に相続人がいない場合、故人の財産や遺品の管理を誰がするのかという問題が残ります。家庭裁判所に申し立てることで「相続財産管理人」を選任してもらうという手段がありますが、この過程でも遺品の扱いについて慎重な判断が必要になります。

放棄した財産を勝手に処分してしまうと、後から他の債権者や関係者から異議が唱えられる可能性があります。相続放棄は「放棄者になった後は自由に動いていい」という意味ではなく、「法律上の相続責任から外れた」という意味に過ぎないのです。

さらに、遺品整理の費用をどの段階で、誰が負担するのかという問題も発生します。相続放棄成立前に業者に作業を頼めば依頼者負担、放棄後に相続財産管理人が対応すれば相続財産からの支出という具合に、状況によって大きく異なります。この判断も専門家の指導を受けながら進めるべきです。

一人で判断しないために、相談できる窓口

専門家が親身になって相談者の話を聴く風景

相続放棄を考えているとき、遺品に触れてよいのか、業者に依頼してもいいのか、費用はどうするのか——こうした判断は、専門家なしで一人で進めるには難しすぎます。幸いなことに、相談できる窓口は複数あります。

弁護士や司法書士は相続全般のアドバイスが可能です。また家庭裁判所でも相続に関する一般的な相談を受け付けています。経済的な理由で民間の専門家に依頼しづらい場合は、法テラスなどの法律相談窓口で無料相談を受けることもできます。

相続放棄の熟慮期間は、あっという間に過ぎていきます。「もう少し考えよう」と先延ばしにしているうちに、うっかり遺品に手を付けてしまい、後から後悔する方も多くいます。

迷い始めたら、その時点で専門家に状況を伝えることをお勧めします。相談することで、状況に応じた最適な進め方が見えてくるはずです。

この記事を書いた人

遺品整理サポートナビ編集部

遺品整理サポートナビ編集部

「遺品整理サポートナビ」は、クアジュ合同会社が監修・運営する、遺品整理に関する情報メディアです。
大切な方を亡くされたご遺族が、ご自身のペースで次の一歩を踏み出せるよう、費用・手順・業者選びなどの実用的な情報をお届けしています。

※本記事は一般的な情報提供を目的としており、法律相談・税務相談・個別の専門的な助言に代わるものではありません。具体的な状況については、弁護士・税理士・司法書士・遺品整理業者などの専門家にご確認ください。

コメント

タイトルとURLをコピーしました